札幌の方からお譲りいただいた故障品のCT-A7です。1984年発売、当時94800円ですから高級機に分類されます。トレイのギヤが欠けているのでは?というお話でした。PIONEERのデッキはなかなか扱う機会が無いので、興味津々の作業です。
イジェクトボタンを押すと、ギア同士が擦れる「ギー」という音が鳴ります。ギア欠けが起きていれば修理は難しいかもしれません。
早速カバーを外してメカを観察します。
ベルトは3本使用されていますが、うち2本は衣類に使用するゴムを加工して取り付けられています。かなり苦心の跡が見受けられます。
見た目とは裏腹に底部の固定ビス2本とこのメカ背面のコネクタ4個を外すことによりメカを取り出すことができます。
メカを取り出してメンテナンスを行います。
デュアルキャプスタンの3ヘッドです。どんな音を奏でるのでしょうか?楽しみがあって修理に気合が入ります。
メカの背面です。左側の白く丸いパーツはポテンショメーターでメカの動作を検知しています。
ポテンショメーターとトレイ開閉を担っているメカですが、衣類用のベルトがスリップしています。
ポテンショメーターを駆動するギアにはマーキングが付けられています。
キャプスタンはダイレクトドライブでなくベルトドライブ方式で、2本のベルトが使用されています。1本は再利用可能でしたが、ほかの1本は写真に写っているようなものでしたので別のものに交換します。
キャプスタンモーターを取り付ける前に、写真のように一度ベルトを仮組し、モーターを組み込んだ後にプーリーに掛けてやります。
元通りメカを組み立てて、試運転をしましたが、まったくうまく動作しません。どうやら、メカ向かって左側にあるこの白いカムのセッティングが狂っているようです。このカムは分解しなくてもベルト交換はできるのですが、おそらく以前にベルト交換をしたときに分解してしまい、元通りに組むことができなくなったものと思われます。初めに「ギー」という音が出ていたのは、カムが回り切っているのに停止機構が働かずに駆動側のギアが無理やりカムを回そうとしてギヤの歯車が空回りしたためです。
サービスマニュアルは入手しましたが、ここの組み方の解説はありませんでした。初めてのメカなので、指でプーリーを回転させて動作状況を観察します。何度も何度もバラしては組んで動作確認を行います。そうしているうちに、動作システムを理解できるようになりました。
トレイが全開のときのカムの位置は写真のとおりです。わかりやすいように黒くマーキングしました。これでようやく音出しができます。
さあ試運転、とテープをトレイに入れた瞬間、自動的にトレイが閉まりました。中を覗くと、ホルダーの下部にセンサーらしきものが付いています。ただ、カセットハーフの透明度によっては無反応の時もありますので、その時は操作ボタンを押すと閉まります。
肝心の音質はというと、バイアス調整機能が装備されていませんのでテープを選びますが、マッチしたときの音質はびっくりするくらい良い音が鳴ります。
サイドウッドが付属していますが、後継機のCT-A7Dのものでしょうか?硬派なデザインが魅力的です。先日のKX-1100Gといい、置くスペースがあればコレクションに加えたいところですが・・・