SONY製のカセットデッキ2台の修理依頼をいただきました。一台はTC-FX606Rという機種で、もう一台は今回記事にするTC-K222ESGです。
以前動作不良が起きたためオーナー様自らベルト交換を行ったものの、テープ走行不可で一旦はお蔵入りとなったとのことです。まずは点検を行います。
トレイ開閉はOKですがテープ走行しません。また、テープセレクター表示にがちらつきが見られます。
カバーを外して内部を観察します。キャプスタンモーターが回転していません。モーター基板のケミコン液漏れが疑われます。
ところが、指で回転させようとしても強い抵抗があり回転しません。分解組立時に何か間違いでもあったのでしょうか。
メカを取り出して状態を確認したところ、別の不具合が発見されました。右写真は左側ピンチローラーを下から写したものですが、ピンチローラーの位置が1mm以上手前(写真では上側)にずれています。この状態ではテープがヘッドから脱線してテープを痛めます。
キャプスタンが回らない理由が分かりました。カセット窓の照明用のケーブルがフライホイールに挟まっていました。
また、ピンチローラーが手前にずれていた件は、取り付けシャフトの抜け出しによることであることも判明しました。シャフトの圧入が緩んで簡単に抜けてしまいました。再度抜け出さないように差し込み部に軽く傷を付けてハンマーで所定の位置まで打ち込みます。
モーター基板のケミコンに液漏れは発生していませんでしたが、予防措置として新品交換します。
続いてメカフロント部に移ります。モーターを分離し、
交換されたベルトの状態は悪くないようでしたが、手戻りが無いように交換します。
ロータリーエンコーダーを取り外して分解します。
接点を清掃し専用グリスを塗布しました。
テープセレクターの検出スイッチもカバーを外して清掃します。表示のちらつきはここの接触不良が原因です。
ピンチローラーです。通常は研磨・清掃等を行い再利用するのですが、かなり硬化が進行していてテープ走行に不具合が発生するおそれがあったので新品の代替品に交換しました。
元通りに組み立てて、調整に移ります。まずはミラーカセットでテープパスの点検調整を行います。テープにヨレやシワができないようにピンチローラーの位置を決定します。
と、ここで新たな不具合が発見されました。再生ボタンを押すと早送りになるなど誤作動が起きています。これは操作ボタンのスィッチの接触不良によるものです。
フロントパネルを取り外してスィッチ交換を行います。
関係する10ケのスィッチを交換しました。
テープ速度の点検、ヘッドアジマス調整を行います。
バイアスキャリブレーションの動作状況の確認、録再バランス調整、ヘッドホンVOLのガリ修正を行い、
修理完了です。