少し前に当店をご利用になった方から、新たなご依頼をいただきました。
SONYの超人気機種、TC-KA7ESです。現在では入手困難な機種の一台です。
トレイ開閉OKです。
早送り・再生ともにリールが回転しません。
そのためテープが引き出された状態になります。
カバーを開けます。
メカを取り出して分解を進めます。
事前にオーナー様からお話しがあったとおり、アイドラーギヤが欠けています。このギヤは、材質の違う2種類(欠けるものとそうでないもの)が存在しますが、これまで下位機種のTC-KA3ESでは何度か経験しましたが、この機種では初めてです。
スペア品と交換します。
調整式になっている左側のピンチローラーを取り外す前に、位置を測定しておきます。通常は21.1~21.4mm程度ですので、2mmも前にせり出しています。
ピンチローラーアームを取り外します。
交換を行いましたが、左側は、コアが完全に破損していました。
キャプスタンモーターユニットを切り離します。
先ほど2mmせり出していたピンチローラーアーム取り付けシャフトを測定します。ここは通常47.8mm程度が普通ですので、シャフトが3mm以上抜け出していることがわかります。
モーターユニットを分解します。
シャフトは簡単に抜けてしまいました。原因は、製造時の精度の低さです。抜け出し防止処置を施して所定の位置まで差し込みます。
キャプスタンベルトも低グレード機種用のものが使用されていました。後ほど交換します。
モーター基板の電解コンデンサーは交換済みでしたが、20年前とのことですので、再度交換します。
新しいベルトを掛けて組み立てます。
メカフロント部を分解します。
ゴムベルトが光っているのは、ブリード現象といって、油分が浸み出したためです。
ベルトの掛かるプーリーを脱脂して、新しいベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを分解します。
接点を研磨清掃し、スライド接点専用グリスを処置します。
オートセレクタ用のスイッチ接点を磨きます。
元通り組み立てます。
メカを本体に戻して動作確認というところで、ある異変に気がつきました。ドルビー切替が不良です。BとCは正常ですが、OFFにすると「C」、Sに切り替えても「C」表示になっています。何度か繰り返しても状況が変わりませんので、回路の故障でしょうか?そうであれば厄介なことになります。しかし、回路図を30分ほど眺めていると、回路ではなくスイッチの不具合ではないかという結論に至りました。
早速フロントパネルを取り外します。
スイッチ基板を取り外します。左下がドルビー切替スイッチです。隙間から接点復活剤を処置します。
無事正常に戻りホッとしました。
調整に移ります。ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
バイアスキャリブレーションを行います。レベルとイコライザー調整時に、メーター表示に若干の不具合が見られます。残念ながらこれは対応できませんが、調整機能自体は正常ですので、大きな問題は無い旨、オーナー様にお伝えします。
録再バランスの調整を行い、聴感での録再状況を確認し、修理完了です。