昨日修理したDTC-ZA5ESのオーナー様から依頼をいただいた4台目のデッキはPCM-7030です。
プロ用の録音機材として開発されたモデルですので、操作方法やデザイン、もちろん中身も民生機とはまったく異なります。
完全動作品として保管していたものの、いつのまにか不動となってしまったということです。
スタジオ等での使用を前提としているため、接続はキャノンコネクタとなっています。そのためアンプに接続するためには変換アダプターが必要です。
オーナー様のお話ではテープが閉じ込められているとのことでしたが、あっさりイジェクトしました。
カバーを開けてメカの動作状況を目視点検します。赤い4ヘッドドラムが目を引きます。
テープを挿入し再生ボタンを押すとALARMランプが点灯しERROR表示となりました。
テープのリールを観察すると、右側のリールが回っていません。昨日修理したZA5ESと同じ症状です。
メカを取り出すために上部の基板を外しました。
故障個所にアクセスするために基板やカバーを取り外していきます。
この写真だけ見るとDTC-1000ESに似ていますが、
駆動メカでもっとも異なるのは、モーターの動力を伝達するのはゴムベルトではなく、タイミングベルトになっていることです。そのため、メンテナンスフリーとなっています。この機種の技術を基にDTC-1000ESが開発されたはずですが、なぜ、DTC-1000ESはゴムベルトに改悪したのかが理解できません。穿った見方をすると、わざと故障しやすくしたとも言えます。
リングギアにはグリスが多めに塗布されていて固着の恐れがあるので、分解清掃します。
割れやすい樹脂製ギアは対策品に交換されています。
故障の原因となった2DDリールメカです。片方は固着して回りません。
もう片方もブレーキのパッドが貼り付いています。
固着していたリールを力を入れて回すとパッドが剥がれました。指で回すとまったくブレーキは機能しいないことがわかります。
ブレーキを構成しているパーツを分解します。
ボロボロのパッドを貼り換えました。
元通りに組み立てましたが、ここからコツが必要です。
リングギヤ周りを分解しましたのでロータリーエンコーダーの調整を行う必要があります。
テープがローディングされていない状態でギヤを写真の位置に合わせ、取り付けます。そして、テープがローディングされた状態でピンチローラーとキャプスタンの間隔が1mm程度となるように微調整します。
テープを挿入し動作状況の確認を行います。再生OKです。ヘッドからの信号も正常です。
続いて録音状態を確認するのですが、初めに記載したとおり操作が複雑ですので、オーナー様から取説をデーターで送っていただき、それを見ながらの作業です。
4ヘッドですので、録音しながら再生モニターが可能です。動作・録再良好です。無事修理が完了しました。