以前、当店でA&Dのカセットデッキを修理された方から、新たなご依頼をいただきました。
ナカミチのZX-5です。使用中に突然停止し、それっきりということです。
操作を受け付けません。トレイも開きません。
カバーを開けて、指差ししているコントロールモーターのシャフトを、ドライバーの先端で少し回します。
トレイが開き、動作も正常に復旧しました。しかし、これで修理完了ではありません。このままでは再発は必至です。
メカを降ろします。
化粧パネルを取り外します。想定内ですが、バックテンションベルトが無くなっています。
加水分解で、ゴムが油絵の具のように液状化していますので、除去し、オレンジクリーナーで清掃します。
もう片側のプーリーにも付着していましたので清掃します。
トレイ開閉を検知するスイッチ接点を磨きます。
リールモーターの内部接点リフレッシュのため、直接電圧を印加し、数時間空転させます。
問題のコントロールモーターユニットを取り外します。
モーターでON-OFFするスイッチ接点を磨きます。
代替モーターを加工組み付けします。
キャプスタンベルトを交換します。
新しいバックテンションベルトを掛けます。
元に戻して動作確認を行います。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し、速度調整を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
スライドVOLにガリが見られますので、隙間から接点復活剤を処置します。
ここで新たな問題が発覚しました。録音してみると、かなり音が籠ります。
両CHとも同じ状況ですが、可能性としては、録音ヘッドの性能低下、または、写真のオレンジキャップが原因と思われます。
ナカミチ製のデッキでは、オーディオ回路のコンデンサーに、写真のオレンジ色のものが使用されていて、経年劣化により、音質低下、ノイズ発生など、さまざまな問題を引き起こすことで有名です。
オーナー様に録音不良の状況と、修理する場合の追加費用をお知らせしたところ、快諾いただきましたので作業を進めます。
作業を行うため、筐体の一部を分解します。
計27ケ交換しました。
結果は・・・大成功です。しかし、録音状況が改善されたことにより、また新たな不具合が発見されました。かなりハイ上がりの状態で録音されます。
バイアス調整が効きません。以前も同様の故障を経験していますので、VOLの故障が疑われます。
フロントの化粧パネルを取り外し、固定している3本のビスを緩め、ユニットを取り出します。
100kΩのVOLです。用意できるのはセンタークリックが無いものになりますが、問題にはならないと思います。
CDを録音再生モニターし、バイアス調整が可能になったことを確認します。
周波数特性の変化を測定します。縦線4本は、左から、315Hz、2000Hz、10000Hz、16000Hzです。
ツマミを時計回り一杯に回します。高域が減衰しました。
反時計回り一杯に回すと高域がアップします。低グレードのマクセルURでこの性能ですので、ナカミチ恐るべしです。
テープポジション別に録再バランス調整を行い、以上修理完了です。