SONYのTC-K555ESRの修理依頼をいただきました。
5年ほど前から不調ということです。
イジェクトボタンを押しても指でアシストしなければトレイが開きません。
また、再生を開始してもすぐに停止します。
カバーを開けてメカを取り出します。まずは再生時の走行不良の修理を行います。
カセットハウジング内の化粧パネルを取り外します。
化粧パネルの裏側には、黄色のプリズムが取り付けられています。このプリズムは、ランプの光を回転センサーに導く役割がありますが、ランプの光が当たる部分に埃が堆積し曇っています。そのため、光が弱くなったことでセンサーが反応しなくなり再生が勝手に停止したと考えられますので、ウエスで埃を除去します。知ってしまえば単純なことですが、こういった修理は経験がものを言います。
一旦メカを本体に戻して動作確認を行います。予想通り、これで勝手に停止することはなくなりました。
続いてトレイの不具合を修理します。
トレイが開くときにバネの力を受ける部分が破損していました。トレイが勢いよく開く、いわゆる「ロケットオープン」によるバネの力に耐えられなかったものと思われます。
破損したパーツを接着してもバネの力に耐えられませんので、加工が必要になります。鋼製の径1.4mmのワイヤを用意します。
折れた箇所に穴を開けます。最初は0.5mm程度のドリルで穴を開け、ワイヤが刺さる径まで拡大します。これで強度は十分です。
ロケットオープンは、トレイが急激に開く力を吸収するこのダンパーゴムの劣化が原因ですので、新品交換します。
メカ正面のメンテナンスを行います。
リールを分解し、パーツ同士が擦れる箇所にグリスを処置します。
硬化したピンチローラーを交換します。
カセットホルダーを組み付けて開閉動作の確認を行います。
メカ背面です。
指差ししている箇所が固着しやすいので注油します。
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布し、新しいベルトを掛けます。
メカを本体に戻し、ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープで録音再生状況を確認し、完成です。