GX-9のメカの整備を終え、走行テストを行おうとしたときのことです。
AKAIやA&Dのデッキは、基盤が上下2層に分かれているものが多く、このデッキも例に漏れず上部にコントロール基板、下部にメイン基板が配置されています。メカを整備するためには、メイン基板に接続されているヘッドのコネクタを外す必要があり、上部のコントロール基板の脱着を行わなければなりません。
整備を終えたメカを本体に組み込んでヘッドのコネクタを接続し、コントロール基板を元の位置に戻して電源をONにしました。とその瞬間、「バチッ」と嫌な音がしてパーツが焼けた匂いが立ち込めました。
どうやらコントロール基板の一部が本体に接触してショートが起きたようです。
デッキに目をやると、ディスプレイに不具合が起きています。カウンターも含め、レベルメーター以外の表示が点灯しません。それでもテープ走行は正常ですし、音も普通に出ます。
さすがに焦りました。ディスプレイやICに故障が起きたということであれば復旧はほぼ不可能です。ただし、表示が消えていること以外は正常ですのでまだ望みはあります。ここは冷静に故障個所の特定を行わなければなりません。
まず、レベルメーターが点灯していますので、ディスプレイ自体は正常であると仮定します。そうすると、ヒューズは切れていませんが、電源ラインが疑われます。
そこで、回路図を取り出して、電源ラインの電圧チェックを行うことにしました。
点検の結果、丸数字15というところの30V(回路図では29V)が0Vになっていました。ここの根元を探れば故障個所が見つかるはずです。
この回路はメイン基板のものです。さきほどの30Vはメイン基板の③から供給されています。そこの根元を辿ると、TR97(2SC2603)がそれを担っていることがわかりました。
基板から(2SC2603)を取り出しました。30Vラインのショートの衝撃で頭が欠けています。トランジスタチェッカーでは「端子間の短絡(故障)」と表示されました。やはりこれが原因のようです。修理するためにはこのトランジスタを入手しなければなりませんが、ネットで注文すると3日は待たされますので手持ちのジャンク基板に同じ部品がないか調べることにしました。可能性が高いのは、後継機のGX-93です。サービスマニュアルのパーツリストで確認します。
やはりありました。TR22です。同じメーカーの製品だけに同じ部品が使用されています。
手持ちのジャンク基板から取り出しました。さあこれで治らなければピンチです。
見事回復しました。それにしてもショートが起きた場合、本来はヒューズが切れると思うのですが、こんなこともあるんですね。