少し前にSONYのカセットデッキの修理を行ったときのことです。走行が不安定という不具合の原因はピンチローラーの劣化でしたが、オーナー様からは、事前に「温泉地に住んでおり、VOL類が故障しやすく一度修理をしたことがあるので、修理の際に点検してほしい」というご依頼がありました。
海沿いの地域では金属製のものが腐食しやすいということは知っていましたが、温泉地の件は初めて聞いた情報です。
デッキが届きましたので、早速カバーを開けました。すると、銅メッキ部分が酸化して黒ずんでいました。これが温泉地の影響によるものでしょうか?しかし、それ以外には、VOLも含め特段の異状は見られませんでしたので、いつもどおり修理を行い、オーナー様のところにお返ししました。
ところが、3か月ほど経った頃、「異音が発生し、本体が振動する」とご連絡をいただきました。
早速機器をお送りいただいて動作テストを行うと、電源投入後10秒ほどで金属同士が擦れるような大きな音と振動が発生しました。
キャプスタンモーターの不具合に間違いありませんので、早速メカを降ろして分解を行いました。
これは記事用に撮影したほかのモーターの写真ですが、フライホイールとコイルは写真のような構造になっています。
楊枝で指している箇所が軸受け部になります。ここにはグリスが塗られていますが、グリス切れが起こるようなところではありませんので、ほとんどメンテナンスは不要な箇所です。しかし、なぜかグリス切れしていました。しかも人為的に油分を完全にふき取ったような乾いた状態でした。そのため、軸受け部が擦れて異音が発生していました。
グリスを塗布し、動作テストを行いましたが、異音は完全には解消されません。シャフト部分が摩耗し、フライホイール内部と軸受けとのクリアランスがなくなったためと考えられるため、摩耗した箇所にスペーサーをはめ込み、異音等は解消されました。
今回の原因ですが、人為的にふき取られ、しかも乾いた状態になるということはあり得ないでしょうから、温泉地の影響ということが考えられます。ネットで検索すると、温泉地域などでの硫黄による硫化の影響に関する記事が見つかりました。硫化対策されていないテレビなどの家電は、状況によっては1年程度で故障することもあるようです。
私はその道の専門家ではないので、今回のグリス切れの件と硫化ガスとの科学的な因果関係を証明することはできませんが、いずれにしても温泉地と家電は相性が悪いようですね。