1年ほど前からお付き合いのあるお客様からDTC-ZA5ESの修理依頼をいただきました。テープ走行はするものの、次第に音が出なくなってきたとのことです。
機器が到着しましたので、早速状態を確認します。ところが、まったく正常に再生されます。ヘッドからの信号も問題ありません。電源を投入直後に自動的に「CLEANING」状態になったので、ヘッドが汚れていたのが原因だったのかな?と思い、そのままお客様にお返ししようとしましたが、念のため数分間状態を見ていると、ヘッドからの出力が不安定になってきました。テープが原因かと思い、別なものに替えましたが、状態は悪くなる一方で、遂にはヘッドからの信号は途絶えてしまいました。
ヘッドチップを拡大鏡で確認しましたが、破損や汚れは見られません。これまでヘッドの故障は、一つ目は「ヘッドチップの破損」、二つ目に「摩耗」、三つ目として「不明(内部の断線または接触不良?)」というのを見てきましたが、今回はおそらく3つ目、ドラムヘッドの内部に不具合が生じていると思われます。
ドラムヘッドの内部はブラックボックス化されていますので、ヘッドの交換しかありません。オーナー様にお知らせしたところ、ヘッド交換を希望されましたので、メンテナンスと合わせて修理を行うこととなりました。
まずはメカを取り出して、
ヘッドを固定している4本のビスと信号用とモーター用のコネクタを外してヘッドを取り出します。
同型のヘッドを搭載しているDTC-A8のジャンク機からヘッドを移植します。右がA8でトレイメカが異なりますが、それ以外はほぼ同一です。
ヘッドチップの外観に異状がないか拡大鏡で確認します。OKです。
ヘッドを取り付けて、まずは動作確認です。正常に動作し、ヘッドからの信号も安定しています。テープパスも調整が不要なくらいピッタリ合っています。それではメンテナンスに移ります。
メカ底部の基板を取り外して、各ユニットを分離し点検を進めます。
古いグリスにより若干動きが重くなっていますが固着はありません。CRCでふき取って、新たにグリスを塗布しなおします。
動きが大変軽くなりました。
ここもウィークポイントのひとつですが、ブレーキパッドの状態は大変良好です。
元通りに組み立てます。消耗品のモードベルトも交換します。
ピンチローラーです。プロ用クリーナーS-721Hで表面をメンテナンスします。樹脂製の留め具が割れていないかチェックします。この機種とDTC-A8はピンチローラーが外れやすいので要注意です。
本体に取り付けて動作確認を行います。大変軽やかな動きで気持ちが良いです。アナログ・デジタル入力の録音再生を繰り返し、ヘッドの信号を確認しながら最終チェックを行います。
ボリュームのガリ、操作SWの状況などを点検し修理が完了です。