今回の修理は、本ブログ初登場のSONY製3ヘッドカセットデッキTC-KA5ESです。以前、下位グレードのTC-KA3ESは何度か修理したことはあります。本機体はトレイ開閉ができない状態です。
デザインはDATのDTC-ZA5ESと統一したものとなっています。並べると格好いいと思います。電源をONにし、イジェクトボタンを押すと、「ジー」とモーターの音はしますが、トレイの反応はありません。
メカを取り出すために、カバーを外します。中央にデッキメカと電源、左にコントロール基板、右にオーディオ基板という配置です。これまでのシリーズとは異なり、底板を外さなければメカが取り出せません。
メカを固定している上下のビスを外し、メカを少し前に押し出してトレイカバーを外します。
ESG以降採用されている信頼のメカです。
キャプスタンモーターを分離するため、トレイと背面パネルを外します。
ヘッド周りやブレーキパッドの状態を点検します。異状はありません。
左右ピンチローラーも外します。右は専用クリーナーS-721H(当店のショッピングサイトで販売しています)で清掃後です。
キャプスタンモーターを固定している4本のビスを外して分離します。
モーターの基板とキャプスタンを分離します。ベルトは新品に交換します。
この機種あたりの年式になるとこの電解コンデンサーに不具合は生じにくいようですが、消耗品には変わりありませんので交換します。
次はリールやヘッドを駆動するメカのメンテナンスです。まずはこのベルトを交換します。
前面のギヤとビス5本を外し、モーターを分離します。
左は伸びきったベルトです。右の新品に交換します。
このベルトの交換は普通にやると非常に難しいのですが、一旦このように仮設し、モーターを取り付けた後にプーリーに架け替えてやると簡単です。
つづいてロータリーエンコーダーに移ります。メカの動作状態を検知するパーツです。接点が劣化すると動作不良を起こします。
分解すると接点がたくさんあるのが分ります。この接点の組み合わせで動作を検知します。
接点のクリーナーで清掃します。綺麗になりました。
元通りに組み立てていきます。ヘッド周りは新品のようにピカピカです。いよいよ本体に組み込んで動作テストです。
動作しました。次はテープ走行と音出しを行います。
OKです。動作良好です。それでは調整に移りましょう。
テープ速度は良好、アジマスを調整します。これで再生はOKです。続いて録音状態を確認したところ酷いガリが出ています。
この機種のREC VOLはフロントパネルを外さないとメンテナンスできません。接点復活剤を塗布しガリは無くなりました。バイアスキャリブレーションの動作状態、録音レベルのバランス調整を行い修理完了です。
良い音です。欲しいデッキのひとつですが、中古市場では結構な値段で取引されているようで残念ながら手が出ません・・・