これまで何度かお取引いただいている方からの新たなご依頼です。
YAMAHA製3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、KX-1000です。最近オークションで購入されたということですが、何点か不具合があるということです。
操作ボタンが外れていました。輸送中の振動が原因でしょうか?接着補修します。
オートセレクタ表示がMETALのまま動作しません。回路または検出スイッチの故障です。
カバーを開けます。
これはオートセレクタのスイッチですが左端に注目してください。レバーの下にあるべきスイッチが上になっています。明らかな人為的な組み付けミスです。
横から見たところです。右写真は修理後です。スイッチ自体も変形していましたので、カバーを外して修正しました。
正常な状態に復帰しました。
テープ端にシワができるということでしたが、手持ちのテープを数回走行させましたが再現されませんでした。
ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視確認しましたが、テープガイドとの干渉等もありません。
ヘッドホン出力にハムノイズが乗るというということでしたが、異常ありません。使用環境によるのでしょうか?
スライド式のマスターVOLの右CHが、MAXまたはMIN状態にしかなりません。
フロントパネルを取り外してスライドVOLに接点復活剤を処置しましたが、残念ながら改善は見られませんでした。
しかし、録音時のレベルバランスは、プリセットVOLで調整可能ですので大きな問題ではありません。このことをオーナー様とご相談し、最終的には、オーナー様がお持ちの同型機からVOLを移植することとなりました。
スペア機をお送りいただきましたので、VOL基板を取り出して交換します。
動作確認します。
録音時の音質が良くないということです。たしかに酷い状態です。
バイアスのVOLが効きません。ただし、ツマミを左右に揺すると、一瞬ですが音質と音量が回復します。VOL自体にに問題があるようです。
底板を取り外します。
VOL端子に半田クラックが見られましたので再半田しました。これで録音音質は大幅に改善されました。
テープ走行が不定期に停止します。このSANKYO製メカに搭載されているリールモーターは、内部接点の接触不良がおきやすいため、最初はそれが原因かと思いました。しかし、その場合は、右側のリールが停止した後にオートストップが働きますが、そうではありませんでしたので、オートストップシステム自体の問題と思われます。
この機体は、DIYで整備されたような形跡がありましたので、もしや、と思い、リールを取り外してみました。
予感は的中しました。リールの裏側には、回転センサーが検知するための黒銀の縞模様が付けられていますが、右側の黒色の部分は、マジックペンで塗られたようになっています。なぜこうなったか理由は想像がつきます。
バックテンションベルトが加水分解で溶けてリールに絡みつき、それを除去するために、アルコールかマジックリンなどの洗剤を使用したため、黒色の模様がはげ落ち、それを修正するためにマジックで塗り直したとものと思われます。しかし、その処置が中途半端だったため、センサーが誤作動したということになります。
黒色の部分を補修します。
正常になりました。
メンテナンスに移ります。太めのバックテンションベルトを交換します。
カムモーターユニットを取り外します。
スイッチ接点を磨きます。
カムモーターとリールモーターの内部接点の接触改善を図るため、直接電圧を印加て数時間空転させます。
劣化の見られるベルトを交換します。
動作確認を行います。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の調整を行います。
アジマスの調整を行います。
録再バランス調整を行います。dbxがONにした時も同様です。
バイアスもかなり弄られた形跡がありましたので、可能な限り調整します。
テープポジションの異なる複数のテープで録再状況を確認し、修理完了です。